このまま今の仕事でいいの?キャリアに迷う人が知っておきたい「偶然を味方にする」考え方
はじめに
「やりたいことが見つからない」「このまま今の仕事を続けていていいのだろうか」
そんな不安を抱えながら、答えが出ないまま日々を過ごしていませんか。
キャリアについて考えようとすると、多くの人が「目標を明確にし、計画的に進むべきだ」という言葉に行き着きます。しかし現実のキャリアは、計画通りに進まないことのほうが圧倒的に多いのではないでしょうか。偶然の出会い、予期せぬ異動、たまたま引き受けた仕事が、その後の人生を大きく左右することも珍しくありません。
こうした現実を前提に、「キャリアは偶然によって形づくられる」と理論化したのが、心理学者ジョン・D・クランボルツの計画された偶発性理論です。本記事では、この理論の考え方を紹介するとともに、「本当に信じていいのか?」という反論や限界にも触れながら、キャリアに悩む人が“今できる行動”について考えていきます。
計画された偶発性理論とは何か?
「計画された偶発性理論」は、1999年に米国スタンフォード大学のクランボルツらによって提唱されたキャリア理論です。
この理論は、人生やキャリアの発展には偶然の出来事(ハプンスタンス:happenstance)が重要な役割を果たすと主張しています。
予想外の出来事がチャンスとして現れることを「単なる運」ではなく、戦略的に活かしうる要素として捉える点が革新的といえます。
従来のキャリア理論は、個人の能力や価値の測定に基づく「計画性」「適性マッチング」を重視してきましたが、クランボルツは人間のキャリアが複雑で予測不能な世界の中で形成されることを強調し、偶然を「機会」に変えるための態度と行動を育てるべきだとしています。
偶然を活かすための5つの要素
計画された偶発性理論では、偶然をキャリア形成につなげるために以下の5つの行動特性を提示しています。
1 好奇心(Curiosity) – 新しい学びや出会いを追求する。
2 持続性(Persistence) – 失敗や困難に直面しても行動し続ける。
3 柔軟性(Flexibility) – 状況や計画が変わった際に適応する。
4 楽観性(Optimism) – 新しい機会に前向きな期待を持つ。
5 冒険心(Risk-taking) – 結果が不確実でも行動を起こす。
これらを育成することで、「偶然を待つ」のではなく、「偶然を呼び込む行動」ができるようになるというのが理論の核心です。
また、キャリアの実例としてクランボルツ自身の人生も引き合いに出されることがあり、彼が大学専攻を決めるきっかけも偶然の指導教員との出会いだったと語られています。
計画された偶発性理論に対する反論・批判
魅力的な理論である一方、学術的にはいくつかの批判や限界も指摘されています。
社会的・構造的要因の軽視
計画された偶発性理論は個人の行動特性を中心に据えるため、経済的背景・社会的制約・制度的障壁といったキャリア形成の構造的要因が十分に扱われていないとの批判があります。
例えば、家庭環境や社会的支援の違いによって「偶然のチャンスにアクセスできる機会」が大きく異なることは現実のキャリア経験において重要な要素であり、この点は理論的に補完が必要とされています。
自己責任への傾斜
「機会を生み出せるかどうかは個人の態度次第」といった解釈もみられ、成功の責任を個人に帰属させすぎる危険性が指摘されています。
これは、個人の資源や支援環境が異なる現実を無視しており、社会的・制度的な支援の必要性を見落とす可能性があるという批判につながっています。
偶然の定義と計画の誤解の可能性
理論名に含まれる「計画された偶発性」は一見矛盾しているように見えますが、理論を表面的に捉えると「計画は不要」と誤解される危険性があるという指摘があります。
実際には、計画された偶発性理論は計画と偶然を両立させるものであり、計画そのものが無意味だとするものではありません。
どんなときに有効?
計画された偶発性理論は、特に以下のような状況で価値があるとされています。
〇不確実性の高い環境 → 技術変化や産業構造の変化が激しく、予測不能なキャリアパスが一般化している現代。
〇転職や職種転換を考える初期キャリア層 → 固定的な計画だけでなく、チャンスを見つける能力が重要です。
〇教育・キャリア支援の場面 → 学習や探索行動を促し、偶然の機会への敏感性を育むことができます。
こうした場面では、計画された偶発性の視点が、従来のキャリア理論では捉えきれない変化対応力を補完する役割を果たす可能性がある。
まとめ
キャリアに悩むと、私たちはつい「正解」を探そうとします。
しかし、クランボルツの計画された偶発性理論が示しているのは、正解を見つけてから動くのではなく、動きながら意味を見つけていくという姿勢です。
もちろん、この理論は万能ではありません。
社会的・経済的な制約や、個人の努力だけではどうにもならない現実が存在することも事実です。だからこそ、「すべては自己責任」「行動しないあなたが悪い」と解釈するのは危険です。
それでも、先が見えない時代において、完璧な答えを待たずに小さな行動を重ね偶然から学び取る力を育てるこの考え方は、キャリアに悩む人の心を少し軽くしてくれます。
そこに、自分が大事にしたいもの(価値観)や興味関心の理解といった自己認識が加わることで、「単なる偶然」が「意味のある偶然」になるのではないでしょうか。
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